柴野貞夫時事問題研究会 本文へジャンプ



(韓国・ハンギョレ紙 2007年2月14日付け)


「6者会談、2月13日合意を歓迎する」



・ 六者会談参加国が、昨日発表した9・19共同声明(注①)履行の為の初期措置は、9・19声明の本格的履行を知らせる最初の合意文書という点で大きな意味がある。北韓核問題を解決して、韓半島、更には東北アジア平和体制の構築に行く長い道のりが実践段階に近づくのである。各国は、合意の収容を誠実に、迅速に履行することで平和に向かった新たな枠を定着させるのに先頭に立たねばならないのだ。

 東北アジアの平和の為の大きな道のりの始まり
 
 北韓がヨンビョン核施設の閉鎖を越えて、あらゆる核のプログラムに対する完全な申告とあらゆる核施設の不能化という次の段階措置まで同意したことは、9・19声明履行の意志を具体化するものとして評価する事が出来る。既存の北韓の核武装に対する条項が入っていないと貶すことはない。9・19声明は、”北韓のあらゆる核武装と現存する核計画放棄”を規定しているし、今回の合意の履行は、この為の前部文の行動に該当する。合意通りだけになっても、北韓が新たに原子炉を回すとか、核計画を推進するのは事実上不可能だ。北韓が、国際社会の信頼をどれだけ得るかは、まずヨンビョン核施設の閉鎖期限として明示された今後60日間の充実した実践にかかっている。

 六者会談の傘下に設置する事とした5つの実務グループは、会談の議論の構造を常設化して、実効性を高めてくれるものとして期待される。六者会談がやっと日常的な議論の仕組みと執行力を持った組織体となった計算だ。韓半島非核化、経済エネルギー協力、東北アジア平和・安全保障体制、北韓と米国の関係正常化、北韓と日本の関係正常化を取り扱う5つの実務グループに、別途に設置される韓半島の恒久的平和体制フォーラムを加えれば、9・19声明内容の全部を包括する。各国は、力量ある代表団を送り、これらグループに力をのせてやらなければならない。

 今の状況で最も重要なことは、北韓と米国の関係実務グループだ。先月、北韓と米国のベルリンでの協議が今回、合意の出口を出たように、北韓と米国の関係の進展は、六者会談の全体の速度と内容を左右する鍵であるためだ。北韓と米国の2国は、敵対敵の政策を迅速に清算して、正常な関係に向かって進まなければならない。特に米国は、超強国という位相にふさわしく、弱小国である北韓の体制不安・憂慮を緩和してやる処置を、まず講ずることで事態の進展の糸口を解く事を願う。米国が、テロ支援国家指定解除と敵性国の交易法(通商法)適用終了問題をまず検討することにしたのは、こんな脈絡から意味がある。

 エネルギーなど、対北韓経済支援を北韓の非核化履行の程度と連繋したことは、”行動対行動”の原則面で妥当だ。北韓が、深刻な経済難を経験しているのは事実であるが、国際社会の対北支援規模と内容は、結局、核放棄の程度に従って決定される他にない。北韓は、会談毎に多くの支援を要求して協議を難しく作る事より、誠実な非核化実践を通して遥かに多い支援を受ける事が出来ることを心に刻まなければならない。度外れした要求は、北韓の意図に対する各国の疑心だけを大きくするだけだ。

 参加国が、対北支援規模と分担方式の問題をめぐって土壇場まで難航を経たことは、残念である。特に、北韓と日本両者の事案である日本人拉致問題の解決を対北支援と連繋した日本の態度は、批判を受けて当たり前である。東北アジア全体の平和構築よりも、自国の利益だけを押し立てるのは他の国の理解を受ける事は出来ぬ。ジューネーブ合意時、対北重油支援の70%を引き受けた米国が今回、一足後に後退したことも情けない。北韓と米国両者の協議の産物であるジュネーブ合意と、多者協議体である六者会談が異なるのだと言っても、米国は核心参加国として更に多くの負担を引き受けなければならない。先に、韓国が提案した対北電力支援案が生きている状況では一層そうである。

 韓国は、今回の会談で主導的役目をした。北韓と米国の円滑な意志疎通が成り立つまで積極的に仲裁して、対北支援規模・時期・分担方法をのせて、分かれた参加諸国の意見を同じ所に集めることに大きく寄与した。今後、実務グループなどで、そこでの論議が同時多発的に成り立つようになる程度に、韓国の役目は、やはりもっと大きくならねばならない。米国内の強硬派が反発して、会談の進展がぐらつかないように韓国と米国間の意見調整が更に緊密にならねばならないことは言うまでもない。南北関係も会談進展に足並みを揃えて、前向きに新たに検討する時だ。まず、南北当局者の会談が開かれなければならず、北韓内の難しい経済事情に相応する人道的支援再開も考慮せねばならない。南北間の各種経済協力も今は、核廃棄以後まで見通しながら新しい支援から枠を組んで行くときだ。確固たる方針の下、根気強く実行して行く事が出来る戦略的対北政策が要求される。

 汎政府次元の備えはあるか
 
 六者会談は、今、難しい一つの山を越えた。これからも、難関が少なくない。そうであるが、参加諸国の意志さえ、確実であれば解けない問題はない。会談が順調に進行されたら今後、何年の内に韓半島又は、東北アジア全体の安全保障・経済環境が根本的に変化するようになる。本会談は無論のこと、実務グループと韓半島の平和体制のプログラムで論議になる内容の一つ一つが、我々の存在条件に大きな影響を与える事が出来る汎政府次元の備えと対応が必要な理由だ。今回の合意は、9・19声明以後、最大の成果であるが今からが始まりだ。(訳 柴野貞夫)

注① 9・19共同声明 05年9月19日、第4回6カ国協議国が取り込まれた共同声明である。ここで「北朝鮮は、すべての核兵器及び、既存の核計画を放棄し、核不拡散条約(NPT条約)及び、国際原子力機関(IAEA)の保障段階の措置に早期に復帰する事を約束した。これを今回の07年2月13日の協議において”初期段階の措置”と言っている。

解説 柴野貞夫

ハンギョレ紙は、07.2.23日の六カ国協議が東北アジアの平和体制の構築に向けての一歩ではあるが、各国が根気強くその具体化の実務作業を行なう事なしに、その実現がないと主張している。中でも、米国と日本の主体的努力が気がかりであることを指摘。”極東アジアの平和構築”より”拉致問題”を主張する日本に対し、厳しい批判を行なっているのが興味深い。